Sugar&Milk
笑う相沢はいつもと変わらないように見える。俺もご意見メールに関しては何も言わず、連絡ノートのページをめくった。
次のページにももう一枚コピー紙が貼られていた。また部長からのメールで太い赤文字で『オペレーション中の私語は厳禁!』と書かれていた。
「ああ、それね……」
相沢は俺が読んでいるメールの紙に目をやった。
「ごめんね。中山くんにも迷惑かけちゃって」
「いや、迷惑じゃないし」
「でも私のせいで他のみんなも嫌な気持ちにさせちゃったし」
「そんなことないよ」
気を遣って必死に励ました。相沢は自分が当事者だと既に知っているのだろう。
「あの日ね、珍しく夜忙しくて、二人がパニックになって慌てて、私も焦って怒鳴っちゃって……」
「うん」
「私的には励ましたつもりなんだけど……」
「そっか」
「でもそう聞こえなかったかも。ただ汚い言葉で怒鳴ってるって二人も思っちゃったかもしれないし、お客さんも汚いって思ったってことだよね。私口悪いから……」
「他の二人は相沢が体制を立て直そうとしてるのは分かってるはずだよ。だって俺らが教えて何ヵ月も一緒にやってるじゃん」
「うん……」
「みんな相沢が口悪いの知ってるから」
「はは……」
相沢は赤い目をして笑う。
「ただ、相沢は声がちょっとでかいけど」
「そうだね……」
「ご意見もショックだけどさ、悪い方にばっか考えるなよ。悪いところを直して成長できるチャンスじゃん」
俺の言葉に相沢は頷く。けれど相沢が私語で注意を受けるのは二度目。新人の頃にも先輩に同じような注意を受けているのを聞いている。こればかりは相沢の性格と特徴なので本人がよほど反省して自覚しない限り難しいのではと思ってしまう。