Sugar&Milk
「みんなでまた頑張ってこうよ。相沢はもうすぐ卒業だけど、就職してからでもバイトの経験って役立つって思うからさ」
「うん……」
相沢は顔を伏せて鼻を啜った。
同期だから相沢には頑張ってほしいと思う。幸い俺はまだ本社からも店長からも大きな注意を受けたことはないけれど、ショックを受ける失敗だってたくさんあった。
「俺先に店に上がるよ。タイムカード押しとくから、来れるようになったらゆっくり来な」
「ありがとう……」
俺は立ち上がり上着を着ると事務所を出た。
しばらくして相沢も店に上がってきた。何事もなかったかのような顔をして、いつもと同じように悪態をつきながら仕事をした。いつもよりも口数は少なく、声は小さめだった。
そんな相沢を見ながら励ませてよかったと思うのと同時に、俺は何様だよとも思う。偉そうに相沢に良い言葉を並べても、俺は大事な人には傷つける言動しかできていない。
朱里さんのことを考えると苦しい。またこのまま自然消滅かもしれない。同じことを繰り返したくないのに、結局俺は変われていない。
バイトが終わったら朱里さんに連絡しよう。どんな結果になってもいいから話し合わないと。
閉店作業を終え、事務所で着替えてスマートフォンを見ると朱里さんからLINEが来ていた。
『会って話がしたいけど、時間ありますか?』
あ、ついに別れ話だ……。
そう思えるくらい突然のメッセージに返信することができない。嫌な話かもしれないと思ってしまう。
朱里さんに別れてほしいって言われたらどうしよう……。あの楽しかった時間はもう戻らない。朱里さんと出会ったカフェでバイトを続けるのも辛くなる。
家に帰ってからも返信する文章が打てない。悩んでいるうちにベッドの中で寝てしまった。
そうして時間がたつにつれて朱里さんへの連絡がし辛くなってくる。毎日朱里さんのことを考えていた時間さえ苦しい。