ハイカロリーラヴァーズ
 あたし達はどう見えているんだろう。自意識過剰かもしれないけど、そう思う。年下の青司。姉弟か、それとも仕事仲間? まぁ……どうでも良いことだったけど。

 壁側のテーブルだった。バッグを置き、青司と向き合うように座っている。四角い木製のテーブル、騒がしい店内。普通の居酒屋だ。個室じゃないから、少し大きな声で話さないと聞こえないような感じ。

「今日は彼氏、仕事?」

「同僚と飲みに行くって言ってた。まぁでも、帰って来るのあたしより遅いと思うから」

 少し酒を飲んで食事をし、適当なところでホテルへ移動するんだろう。いつものように。特別なことはない。お互いに性欲を満たして、そして自分の日常へ帰って行く。青司の日常はよく分からない。

 自分の日常に、青司がするりと入り込んできた。他のものに触れないで。壊さないで、ただそこに佇む。

 冷たいビールをぐいぐい飲んでいると、単調だった今日の仕事内容が頭から吹っ飛んだ気がした。

 あまり酔うと、帰れなくなる。泥酔セックスは好きじゃないし趣味じゃない。朝、顔がむくむし、何より気分が良くない。

 青司とふたりで会うのは2週間ぶりぐらいだろうか。そんなに頻繁に会うわけじゃないから。

 思い出したようにどちらからともなく連絡しあって、会う。予備校で会ったらなんとなく目配せをして、よそよそしい挨拶をする。

 2週間前に会った時とさほど変わった様子も無かった。それはきっとあたしも。



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