ハイカロリーラヴァーズ

「新しく女性入ったら、仲良くなってよ」

「華ちゃんみたいな美人が来るといいなー」

「えへへ。だと良いね~なんて」

「その子に仕事覚えて貰わないと。あたし安心して休めないもん」

「え? リエちゃん休むの?」

「産休」

 は……? いまなんて言った? あたしは手で口を覆う。

「……え、うそ」

「ほんと。いま3ヶ月」

 リエちゃんはピースサインをしてきた。よそ見しないで、真っ直ぐ歩いて!

「ちょっと、前見て、転んだらどうするの!」

「ああ、大丈夫だよお。なんともなくてさぁ。生理こないから病院行ったら3ヶ月だった」

「やった。ええ、本当に? 良かったね。凄いね凄いね!」

 あたしはただただ感動してしまって、ひとりではしゃいでしまった。リエちゃんご懐妊! あたしの中の新聞が号外を出した。

「とりあえず働きますけど。まだ上司にも言ってないし」

「無理しないでね」

「華ちゃんもね。体に気をつけて。お休みにお茶しようぜー」

 妊婦に体の心配をされてしまった。でも、お互いに体に気をつけて元気が一番だと思う。

「うん。お茶しようしようー」


 リエちゃんが転んだりしないようにハラハラしながら、予備校へ到着する。更衣室へ行って、制服を紙袋に入れた。これは会社支給物だから返さないと。その前にクリーニング。

「校長とアポあるから、あと言いに行ってくる」

「ここでバイバイか」

「うん。事務所にも顔出さないから。急に仕事に穴空けて本当にごめんね」

 事情が事情なので、事務員室には顔を出さずに、話が終わったらそっと帰ろう。

「大丈夫。華ちゃんのも青司くんのも必要書類は全部やっとくから。心配しないで。部長にはあたしがやるって言っておくから。任せて」

「リエちゃん、本当に頼りになるね。見直した」

「知らなかったの?」

 ウフフと笑って、制服に着替えたリエちゃんは事務員室へ入って行った。

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