ハイカロリーラヴァーズ
最初の頃からそうだった。青司は、一緒に居てもなんだか気を使わないというか、割り切ってるって、分かっているからかもしれないけれど。青司もそうだし。細かい気は使いたくない。うざったくなったら別れれば良いし、嫌になったら切れば良いし。
彼氏居るんですね、から食事に誘われて、それにノコノコ付いて行って、あたしが恋人からどういう扱いを受けているのか、それとあたしがどういう女か、分かったと思うんだよね。
初めてふたりで会った時は、あんまり記憶が無いまま、気付いたらホテルのベッドの上だった。
「軽い感じに見えなかったんだけど。華さんて」
ベッドから抜け出て下着を着けている時に、青司にそう言われたことがある。
「なに、軽いって」
「彼氏以外と寝ること」
さっきまで絡み付いていた指は煙草を持っている。のろのろと着替えながら、あたしは青司を睨む。
「そういうこと言わないでくれない……?」
傷つくんだけど。言いながらあたしは頭を抱えた。
誰とでも寝るわけじゃない、なんて言って。タチ悪いよねこういう女。(実際、青司の他にこういう人は居ないし、いままでだってこんなことは無かった)自分でそう思う。あたしだったら友達にしたくない。
派手にしてるつもりもなく、ノリが軽いつもりもない。自分でそういう風にしているつもりはない。ノリが軽くなくても尻が軽かったってことかな。……やめよう、自分で落とすの。あたしだって、青司と出会う前は、こんなことはしなかった
いつまで続くのかな。あたしは源也とどうなるのかな。なにも分からないし、考えていない。
頬杖をついて、青司の話をうわの空で聞いていたら、店員がグラスを割った音で現実に引き戻された。
「そうだね」
話は聞いていなかったけど、とりあえず相槌を打つ。
青司の指が、甘いお酒のグラスを置いてから煙草を指に挟むのを見ていた。その指がとても色っぽい。源也も煙草を吸うけど、煙草を指でつまんだりするその仕草って、なんだかいやらしいと思ってしまうんだけど、これってあたしが変態だからなんだろうか。
1時間半の間に、ビールを3杯。青司は少し多めに飲んでいたと思う。
「そろそろ出ようか」
あたしは言った。なんだか、この店に長く居たくなかった。
店を出て繁華街から外れ、人通りのあまり無い場所に建つラブホテルに入っていく。料金は割り勘。青司にあまりお金を出させたくなかったけど、彼はあたしが全額払うのを嫌った。