ハイカロリーラヴァーズ
 部屋のライトが赤い。趣味が悪い。部屋は薄暗くて、そして赤い。幅10cmほどの細い帯を持った青司の手が見える。

 女性からもてはやされているでああろう青司の容姿も、長い手足も、見たくはなかった。あたしが見たいのはそれじゃない。

 こんなあたしを見ている青司の目を、見たくない。

「なんでもいい……」

 あたしは髪の毛を掻き上げた。暑い。シャワーを浴びたい。ビールが飲みたい。
 青司はベッドに戻ってきて、乱暴にあたしの視界をその帯で遮った。いつも、こうしてあたしの秘密は繰り返される。

 帯を2重に巻いて、後頭部で縛る。取れないようにして欲しい。

「前にあげたアイマスク、家にあるんだよなぁ。持ってくれば良かった」

「……いらないよ」

「せっかくプレゼントしたのに」

 あたしが目隠しを頼むから、面白がってなんだか悪趣味なアイマスクをプレゼントされたことがある。

 帯で縛り終わると、また手があたしの体に触れる。秘部にも躊躇無く指が入れられて、背筋がぞくっとした。出し入れの動きに合わせて出る吐息。あたしの塞がれた目は、あたしを抱く男が青司ではなく、源也として映る。肌も、そう感じ取る。

 目隠しして、口を塞いで。この秘密があたしの体から出ないように。あの人に気付かれないように。

青司を源也に見立てて、抱かれている。だってほら、目隠しすれば、分からないもの。なにが違うのか、分からないもの。

「……なに、どうしたのこの内出血」

 左腕を触れられて、そう言われた。なんだろう。どこかへぶつけたっけ? 見ると、うっすら内出血していた。

「彼氏に叩かれたのか?」

「……」

 洗濯物で怒られて出ていった時のことか。あれでできたんだ。あんなちょっとで……。あたしの体は軟弱だ。

「……足が当たったから」

「今度は蹴りか。最低だな相変わらず。華さんの彼氏」

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