ハイカロリーラヴァーズ
キャラメルポップコーン
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うん、と返事をする自分の声が暗闇で聞こえる。繰り返される秘密が頭を過ぎる。
塞がれた目。敏感になる耳から聞こえる、あたしの声と息づかいと、あと……。
そもそも、部屋が暗くて見えないことと、目を塞がれて見えないことでは、あたしの中で感じ方が違っていて、感じ方が違うということは興奮の度合いも違うということ。
「うんじゃなくて。なんで洗濯物、乾いてないんだよ」
文句を聞いている間、別なことを考えるようになったのは、いつからだろう。
あたしだって普通に仕事をしていて、洗濯物が乾いていないなんて、それだけで怒られても困る。でも、反論したところで彼の怒りは治まらない。分かってる。分かってるからじっと聞いている。
夕飯にしたいけど、なんかそういう雰囲気じゃない。準備もしていないし、惣菜やお弁当が買ってあるわけでもない。
「シカトしてんなよ、華。イライラする」
吐き捨てられた言葉は、床でバウンドしてあたしに当たる。
前回、叩かれたのはいつだったろうか。頭を平手で叩かれた。そんなに痛みは感じなかった。たぶん軽かったからだと思う。でも、源也は背も高くて手も大きいから、振動は軽くはない。あたしがか細いわけじゃなくて。
仕事から帰って来て洗濯をし、外に干す。乾燥機無しの古い洗濯機をまだ使ってるから。雨が降ったりしてれば、外には干せないし、朝になって乾いてないなんてこともあった。
夏とはいえ、先週からなんだか湿っぽく、時折雨も降っていて、外になんて干せなかったから、室内干しをしていた。
源也は自分が仕事に着ていくシャツが完全に乾いていなかったことに今朝から腹を立て、そしてあたしが帰宅してからその乾いてなかったことについて、ずっと言っているのだ。
前は、こんな人じゃなかったのに。どんよりした室内の空気の中で、そう思う。
「お前昨日、俺より早く帰って来てんだからさぁ」
たしかに。やれる方がやろうって話はしているけれど。あたしだって精一杯やってるのに……。