ハイカロリーラヴァーズ
「なんかあげたいんだよ。家で使うものでもいいし、身につけるものでもいいし」

「考えておく。ありがとう。気持ちだけで良いよ」

 そんな風に考えてくれてるんだっていうだけで、嬉しい。

 つまみも無くなってきた。なんか乾きものとか無かったかな……。立ち上がってキッチンへ行こうとしたその時、青司が声をあげた。

「あ」

「なに」

 なんかまたおかしなこと考えついたんじゃないだろうな……。

「あれ、飲んじゃったから。んで、たぶん出ちゃったし」

「アレ?」

「指輪。決まり、指輪にしよう」

 うわぁ、そこか。別に良いのに。そういえば飲んだっけ。馬鹿なことをして。

「いらないよお。無駄遣いしなくて良いって」

「なんでー」

 青司がほっぺたを膨らませて言った。

「あげたい」

「はいはい。気持ちだけ貰っておきます」

「なんだよー」

「着けてたのが無くなったからって、ハイじゃあ新しい次のって、なんかいやらしいじゃん」

「そんなこと無いだろ。俺の気持ちなんだから」

 この人、言ってて恥ずかしくないんだろうか。こっちの方が、顔熱くなっちゃうよ。


「ちゃんと稼げるようになってからでいいわ」

「なんだよそれ」

「いいの」

 このままちゃんと予備校行って、進学して、バイトとかじゃなくてさ……。

「このままでいい」

 変な顔をしている青司の肩を抱いて、そっとキスをした。

 テーブルには食べたあとがそのままだったけど、お蕎麦の食べ残しもあったけど、片付けるのは明日でいい。明日も、きっときみはあたしの隣で笑っている。だから、あたしもちゃんと笑顔でいられるんだ。

 ベッドの上で、青司の鼻をつまんだり、眉毛を引っ張ったり、唇をめくったりしていると、眠そうな顔であたしを見る。

「眠い?」

「うん」

「暗くしようか」

「いい」


 部屋は、スタンドだけが点いていて、お互いの顔が認識できる程度。ふたりとも、真っ暗にしないと眠れないタチだった。


< 91 / 139 >

この作品をシェア

pagetop