東雲沙紀の恋の事件簿―見合い編―
「お見合い?!」
「そっ。部長に頼まれてさ。東雲君、俺をたてるために頼む!」
「お断りします」

生活安全課の課長から会議室に呼びたされたと思ったら、見合い話ときた。

「私なんかより、可愛い婦警もいるじゃないですか」

自分で言うとへこんでくるけど、私なんかより年下で可愛い婦警たちは大勢いる。

「会うだけでもいいからさ」
「お断りしますと言いましたけど」
「いや…、日取りも決まってるから会ってくれなきゃ困る」
「事後報告ですか?」

思わず大きい声を出しちゃったけど、勝手にお見合いの話が進んでいるのに驚く。

「東雲君、他に好きな人いるの?」
「……」

私は、課長の言葉に黙秘をする。

 (南山が好きなんです、と言えたらどんなに楽か)

「とにかく!日取りは決まってるし、週末の土曜日にウエストパークホテルにね!」
「課長、待って下さい!もう……」

課長はそそくさと会議室を出ていき、1人残った私は思いっきりため息を吐いて、会議室を出た。



「おー、東雲。見合いすんのか」
「遂に東雲も収まるときがきたかー」

私に見合いの話が出て、2日後。
廊下を歩いてると、署内の警察官たちから次々に声をかけられる。
B警察署は狭い建物だから、あっという間に話は広がるため、あまり目立たないように過ごしてたのに、今は私の見合い話で持ちきりだ。

南山もきっとこの話を聞いてると思うけど、私が見合いするのをどう思うかなんて聞ける立場でもない。


色々と考えていたら疲れたので、屋上で気分転換でもしよう。
丁度、お昼になるし。

私は母親が作ってくれたお弁当を手に、屋上へ向かった。
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