東雲沙紀の恋の事件簿―見合い編―
私は屋上に行き、ベンチに座ってお弁当を食べる。

天気もいいし、風も心地よくて、屋上にきて正解だ。

「隣、いい?」
「南山?!」
「座るぞ」
「え、ちょっと…」

南山は私の返事を聞かず、空いてるスペースに座った。
手には缶コーヒーに、パンが1つ。

「ちゃんと食べないと、体がもたないわよ」
「生活安全課と違って、刑事は忙しいんだよ」
「そーですか」
「そーですよ」

久しぶりに南山と話せたというのに、結局言い合いになる。

「……」
「……」

南山はパンと缶コーヒーを交互に口に入れ、私もお弁当を食べる。

「お前さ、見合いすんの?」
「課長のお願いだもん」

 (やっぱり南山も知ってるんだ、お見合いすること)

「まぁ、いいんじゃない?俺たちもいい年齢だし」
「えっ…?」

私は南山の言葉に、物凄くショックを受ける。

 (いいんじゃない?って、南山は私のことは何とも思ってないんだ…)

私の勝手な片想いだけど、その相手からの言葉は何よりも悲しくて、辛い。

「俺も近い内に見合いすんだ」
「南山も?」
「部長がうるさくてしょうがないから、とりあえず会って断るつもり」
「そう…、なんだ」

南山がいいんじゃないって言ったのは、こういうことなんだ。

 (伝えてないのに、失恋…、か)

「俺、中に戻るわ」
「うん…」
「式、良かったらスピーチしてやるよ」
「じゃあ私もあんたの時は、嫌味をたーぷり言うわ」
「その倍に言ってやるよ」

南山は鼻で笑い、屋上を立ち去った。


私は目を閉じて、鼻を何度もすする。
頬には涙がつたい、声を必死に我慢する。


南山が言うようにいい年齢だし、そろそろ気持ちにけじめをつけなきゃ。


お見合いして、きちんと断って、警察辞めよう―…。
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