東雲沙紀の恋の事件簿―見合い編―
6
「後は若い者同士で、行こうか」
「はい、部長。東雲、また月曜に」
部長と課長は個室から出ていき、南山と私だけがぽつんと椅子に座っている。
というか南山に告白してもないし、気持ちをバラされてるし、逃げ出したい。
うん、逃げよう。
「私、帰る!」
私は椅子から立って、急いでドアに向かい、ドアに手をかける。
「待てよ」
ドアにかけている私の手を、南山は手を重ねる。
「は、離してよ!」
「逃がさない」
南山は私の手を引いて、私を壁ぎわに追い込むと、両腕を出して、ドン!という音が個室に響いた。
私は南山の両腕に閉じこめられ、背中には壁があって動けなくて俯く。
「東雲、顔をあげて」
「嫌だ」
「あげて」
南山の声が強くて、恐る恐る顔をあげる。
「あっ…」
南山の顔は怒ってなくて、まだ顔が赤い。
「俺さ、東雲のこと、警察学校の時から好きなんだ」
「南山…」
「他の奴と気が合わなくても、お前だけは俺のことを気にかけて話してくれてたし。同じB警察署になった時は嬉しかった」
南山は両腕を降ろすと、私の髪を右手でそっと撫でる。
「随分めかしこんでるな」
「馬子にも衣装でしょ?」
「そう思ってない、似合ってる」
普段は自信家で気難しい感じの南山なのに、今は愛しいように見てくる。
(どうしよう、返事を言いたいのに…)
ずっと片想いしていて、告白前に見合い話があって、南山は無関心なんだと思っていた。
けれど南山からの告白で、ちゃんと両想いなんだと自覚する。
「東雲、返事は?」
「……き」
「は?」
「好き。南山が、好き……」
「良かった」
南山は私の肩に手を置くと、オデコを私のオデコにこつんと合わせる。
もう少しで、2人の唇がくっつきそうなくらいの距離だ。
「東雲沙紀、確保」
「んっ…」
これが、私と南山の恋の事件簿の始まり。
ーfin ー
「はい、部長。東雲、また月曜に」
部長と課長は個室から出ていき、南山と私だけがぽつんと椅子に座っている。
というか南山に告白してもないし、気持ちをバラされてるし、逃げ出したい。
うん、逃げよう。
「私、帰る!」
私は椅子から立って、急いでドアに向かい、ドアに手をかける。
「待てよ」
ドアにかけている私の手を、南山は手を重ねる。
「は、離してよ!」
「逃がさない」
南山は私の手を引いて、私を壁ぎわに追い込むと、両腕を出して、ドン!という音が個室に響いた。
私は南山の両腕に閉じこめられ、背中には壁があって動けなくて俯く。
「東雲、顔をあげて」
「嫌だ」
「あげて」
南山の声が強くて、恐る恐る顔をあげる。
「あっ…」
南山の顔は怒ってなくて、まだ顔が赤い。
「俺さ、東雲のこと、警察学校の時から好きなんだ」
「南山…」
「他の奴と気が合わなくても、お前だけは俺のことを気にかけて話してくれてたし。同じB警察署になった時は嬉しかった」
南山は両腕を降ろすと、私の髪を右手でそっと撫でる。
「随分めかしこんでるな」
「馬子にも衣装でしょ?」
「そう思ってない、似合ってる」
普段は自信家で気難しい感じの南山なのに、今は愛しいように見てくる。
(どうしよう、返事を言いたいのに…)
ずっと片想いしていて、告白前に見合い話があって、南山は無関心なんだと思っていた。
けれど南山からの告白で、ちゃんと両想いなんだと自覚する。
「東雲、返事は?」
「……き」
「は?」
「好き。南山が、好き……」
「良かった」
南山は私の肩に手を置くと、オデコを私のオデコにこつんと合わせる。
もう少しで、2人の唇がくっつきそうなくらいの距離だ。
「東雲沙紀、確保」
「んっ…」
これが、私と南山の恋の事件簿の始まり。
ーfin ー