あなただけを見つめてる。
日陰に咲く花
背中まであるロングストレートの黒髪に、目元ギリギリまである重めの前髪。
黒縁メガネをかけていて、うちの高校の制服の紺のブレザーに青いチェックのスカートだって着崩すことなく、もちろんスカートは膝丈。
そんな地味子として生きている私、葉月葵(はづきあおい)は、今日から高校2年生に進級する。
自宅から学校までは自転車で15分。
学校に着くと、いつものように校舎裏の駐輪場に自転車を止め、前カゴからスクールバッグを取り出すと肩にかけた。
それから、自転車の鍵を抜くと。
「あっ、」
そう思った時には鍵は手から滑り落ち、鍵についてた小さなキーホルダーの鈴が地面でチャリンと音をたてた。
「……はぁ。よっこいしょっと」
って、私おばさんみたいだな。
屈みながら自然と漏れてしまった言葉にひとり苦笑していると。
ふと、駐輪場の日陰でひっそりと咲いていた花に目がとまった。
「……たんぽぽだ」
きっと、鍵を落としてなければ、ここにたんぽぽが咲いていることに気付くことはなかったと思う。
でも、一目につかないこんな日陰でも、こんなに綺麗な花を咲かせることができるんだ。
……なんかちょっと感動。
だけど、同じ黄色い花でも、やっぱ向日葵と比べちゃうとたんぽぽって地味だよね。
そんなところがなんとなく自分と似ていて。
「お互い地味に平和に生きていこうね」
思わず、そんな言葉をかけていた。
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