あなただけを見つめてる。
それからしばらくの間、向日くんと緑川さんと体育祭の楽しかった話をしていたら。
「葉月さん、ちょっと今いいかな?」
目の前には、作り笑顔を貼り付けた根本さんが立っていた。
根本さんは向日くんの手前ニコニコしてるけど、目が笑ってない。
その目が、教室の外へ出ろと言っている。
「…………」
私は、心の中で溜め息を吐いてから、しかたなく椅子から立ち上がり、根本さんと一緒に教室を出た。
「なんであたしが呼び出したかわかってるんでしょ?」
根本さんはひとけの少ない廊下の隅までくると、さっきまで貼り付けてた笑顔なんてもうどこにもなくて。
その目も、その口調も怒りをむき出しにしていた。
「打ち上げの日、向日くんの優しさを利用して、仮病使って家まで送ってもらったってほんと?」
……仮病って。
「私はべつにそんなつもりじゃ、」
──ドンッ!
「……いたっ、」
突然、根本さんに肩を強く押されて、私は壁に身体をぶつけた。
「何するのっ?」