あなただけを見つめてる。



“お待たせしました~!”


テイクアウトの準備ができたみたいで、私は店員さんに声をかけられた。

商品を受け取ったし、もうこれで私がここにいる理由はなくなった。



「……じゃあ、またね」

「葉月?」



鳴海は何かまだ言いたそうだったけれど、私は逃げるようにしてお店を出た。

だって、あの頃よりもっともっとかっこよくなった鳴海の隣にいることに気が引けちゃったんだもん……。


早くこの場から離れたくて、自転車のペダルをこぐスピードをあげる。


鳴海は、今の私を見てどう思ったのかな……。

やっぱ、ひかれちゃったかな……。


自転車をこぎながらそんなことばかりが頭の中をかけめぐる。


っていうか、別に鳴海にどう思われようといいじゃん。

だって、私にはもう関係ない人だもん。

それに、さっきは思わず“またね”なんて言っちゃったけど、きっとこの先鳴海に会うことなんてもうないんだから……。

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