あなただけを見つめてる。




「ごめんね、朝からこんな暗い話しちゃって」



私と緑川さんは、あれから屋上に移動して話していた。


緑川さんは、私のために一緒に1限までサボってくれて。


ただ黙ったまま、私のとなりに座って話を最後まで聞いてくれたんだ。




「緑川さんに聞いてもらったら、なんかすっきりしたよ。本当にありがとう」




今まで誰にもこの話をしたことがなかった。


自分の中で、忘れたい過去だったから。


だけど、忘れたくても忘れられなくて。


時折、胸の傷が疼いて、そのたびに苦しくてしかたがなかった。


それでも、きっと私は誰かに話したかったんだと思う。


聞いてほしかったんだと思う。




「私が緑川さんみたいにもっと強かったら。そしたら、また違う未来があったのかな……」



今も鳴海のとなりにいられたのかな……。



雲で太陽が隠れたグレーの空を見つめながらポツリとつぶやいた。







< 120 / 299 >

この作品をシェア

pagetop