あなただけを見つめてる。
「ごめんね、朝からこんな暗い話しちゃって」
私と緑川さんは、あれから屋上に移動して話していた。
緑川さんは、私のために一緒に1限までサボってくれて。
ただ黙ったまま、私のとなりに座って話を最後まで聞いてくれたんだ。
「緑川さんに聞いてもらったら、なんかすっきりしたよ。本当にありがとう」
今まで誰にもこの話をしたことがなかった。
自分の中で、忘れたい過去だったから。
だけど、忘れたくても忘れられなくて。
時折、胸の傷が疼いて、そのたびに苦しくてしかたがなかった。
それでも、きっと私は誰かに話したかったんだと思う。
聞いてほしかったんだと思う。
「私が緑川さんみたいにもっと強かったら。そしたら、また違う未来があったのかな……」
今も鳴海のとなりにいられたのかな……。
雲で太陽が隠れたグレーの空を見つめながらポツリとつぶやいた。