あなただけを見つめてる。
──ガラガラッ。
「ニッシー、いるー?」
保健室のドアを開けると、赤いメガネをかけて、黒髪を後ろでひとつに束ねたニッシーこと保健室の西川先生が椅子に座ったままこっちに視線を向けた。
「あー、向日くん。おはよう。どうしたの?まさか1限目からサボりじゃないでしょうねぇ?」
疑わしい目でわざと俺を見てくるニッシー。
「違うって。それより、うちのクラスの女子の葉月と緑川来てない?」
俺は保健室をぐるっと見渡したけど、この部屋には今俺とニッシー以外、誰もいないみたいだ。
「来てないけど、どうかしたの?」
「いや、来てないならいいんだ」
じゃあ、あいつらどこに行ったんだ?
「ねぇ、それよりもうすぐ1限始まるわよ?」
「おう、じゃ、またね。ニッシー」
「はいはーい、授業サボらないでちゃんと受けるのよー」
ニッシーの言葉を背中で受け止めながら、俺は保健室をあとにした。