あなただけを見つめてる。


1限が終わった小休憩の時間、葉月たちはやっと教室に戻ってきた。



「葉月たち、どこ行ってたんだよ?」



隣の席に座った葉月は俺と目を合わせようとしない。


その目は、なんだか少し赤くて。


もしかして、泣いてた……?


俺は急に嫌な胸騒ぎがしてきた。



「あたしがちょっと貧血で具合悪くなっちゃって、保健室についてきてもらってたのよ」



そう言ってきたのは、緑川だった。



「そ、そうなの。保健室に行ってて……」



葉月もそれに同調するようにそう言った。



「…………」



ふたりしてなんでそんなウソつくんだ?


俺は保健室に行ったから、おまえらがそこにはいなかったってこと知ってんのに。


だけど、きっと、俺には話したくない何かがあったんだろう。


授業をサボるほどの“何か”が。


その“何か”がすげー気になるんだけど?




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