あなただけを見つめてる。


「向日くん、ちょっとこっちに来てくれる?」



廊下から向日くんを呼ぶのは、隣のクラスの女子3人組。



「おー、どした?」



向日くんは、スポーツタオルで髪を拭きながら、笑顔でその子たちのところへと行ってしまった。


気になってこっそり廊下の方に視線をやれば、向日くんはその子たちと楽しそうに話をしている。


女子から人気があって、誰とでも盛り上がれて、人気者の向日くん。


こんなにザーザーぶりの雨の日でも、向日くんはキラキラしていて。


向日くんとあんな風に話せる女の子たちがうらやましくて。


まぶしい笑顔が自分以外の誰かに向けられると思うだけで、こんなにもモヤモヤしてしまう自分がいる。


……この感情って、いわゆる嫉妬ってやつだよね?



「はぁ……」



忘れるって決めたのは自分なのに。なんでこんな気持ちになっちゃうんだろう……。



「どうしたの?朝から溜め息なんてついて」


「……緑川さん」








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