あなただけを見つめてる。



「ねぇ、向日くん!今、校門のところで他校の女子に向日くんを呼んでくるように頼まれたんだけど」



別のクラスの女子が慌てた様子でうちの教室に飛び込んできたのは、その日の放課後のことだった。



「え?他校の女子?誰だろ」



私の隣の席で帰り支度をしていた向日くんは、いったんその手を止めて首を傾げている。



「たぶん、あれはS女の制服だと思う。すっごい可愛い子だったけど……」



S女って、このへんでは有名なお嬢様学校だよね?



「マジかよ!」



それを聞いた途端、顔色を変えた向日くんは、慌てた様子で鞄をつかんで教室から飛び出していってしまった。


……すごく焦ってるみたいだったけど、どうしたんだろう?


まだ教室にいた根本さんたちのグループも、それ以外の女子たちも、その話を聞いていたようでギャーギャー騒ぎ出している。



“他校の女子が向日くんに会いにきたってマジ!?”


“はぁ~!?誰だよ、その女っ!”


“向日くんの彼女かな?とりあえず、見に行ってみよーよ!”



……ドクン!



向日くんの、彼女……?





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