あなただけを見つめてる。
……っていうか、距離を置くって?
穏やかとは程遠いこの会話に、私の胸はザワつきを増していく。
「だから、それは電話のときに話しただろ?」
「ひとりで考えたいことって言われたってわかんないよっ!ほんとは他に好きな子でもできたんじゃないのっ?」
……っ!!
どういうこと?
向日くんと彼女、もしかしてうまくいってないの?
「桜子、落ち着けって!」
……“桜子”。
向日くんがその子をそう呼んだ。
彼女、桜子ちゃんって名前なんだ……。
私はその“桜子”ちゃんという女の子を一目見てみたくて、ゆっくり、ゆっくりと、ふたりがいる場所まで歩いていく。
雨の音より心臓の音の方ががうるさいんじゃないかって疑うくらいバクバクしてるよ……。