あなただけを見つめてる。
“向日く~ん!”
“シュート決めて~!”
たびたび、グラウンドのギャラリーから上がる歓声。
向日くんが熱を出して学校を2日休んだあの日から、なんだかんだでもうすぐ2週間が経つけど。
向日くんと彼女の噂はいつの間にかすっかり消えていて。
向日くん本人もいつもと変わった様子もなくて、すべてがいつもどおりに見えるけれど。
もしかしたら、彼女と和解してうまくいってるからなのかな……。
とか、そんなことばかり気になったりして。
忘れるどころか、私の頭の中は、毎日向日くんのことでいっぱいだった。
「な~に見てるの?」
……ドキッ!
突然、背後から声がして。
「う、わぁっ!」
思いっきり驚いた私はビクッと肩を震わせた。
「ごめんごめん、そんなにびっくりさせちゃった?」
そう言っておどけて見せるのは、同じ美術部の川原さんだった。