あなただけを見つめてる。
「む、向日くんっ……」
突然のことにびっくりしすぎて、瞬きを繰り返す私。
「あ、それ。葉月も好き?」
そう言いながら、向日くんは私の手元に視線を向けている。
「え?う、うん。そうだ、よかったらこれ、どうぞ」
私は今買ったばかりのオレンジサイダーを向日くんに差し出した。
「え?でもこれは葉月が飲もうとして買ったやつだろ?」
「この前、おごってくれたお礼」
「そんなん別にいいのに。けど俺、これ飲みたくて買いに来たとこだったから、ありがたくいただこっかな」
そう言って、さわやかに笑うと。
向日くんは私の差し出したそれを、“サンキュな!”って受け取ると、自販機の横に設置されているベンチに座った。