あなただけを見つめてる。


「む、向日くんっ……」



突然のことにびっくりしすぎて、瞬きを繰り返す私。



「あ、それ。葉月も好き?」



そう言いながら、向日くんは私の手元に視線を向けている。



「え?う、うん。そうだ、よかったらこれ、どうぞ」



私は今買ったばかりのオレンジサイダーを向日くんに差し出した。



「え?でもこれは葉月が飲もうとして買ったやつだろ?」


「この前、おごってくれたお礼」


「そんなん別にいいのに。けど俺、これ飲みたくて買いに来たとこだったから、ありがたくいただこっかな」



そう言って、さわやかに笑うと。


向日くんは私の差し出したそれを、“サンキュな!”って受け取ると、自販機の横に設置されているベンチに座った。





< 155 / 299 >

この作品をシェア

pagetop