あなただけを見つめてる。




「っていうか、これさっき佐藤に頼まれてたヤツでしょ?」

「え?あ、そうですけど……」



へぇ、私が同じクラスだってことは認識してくれてるみたい。

こんな地味な私のことなんて向日くんの視界になんてこれっぽっちも映ってないものだとばかり思ってたから、ちょっとびっくり。



「あとは俺が教室まで運んでおくから」

「えっ?いいですよっ、私ひとりで持っていけますからっ」

「ダメだよ。女の子がこんな重いもん持ったら」



……あの時の鳴海の姿と向日くんの姿が重なった。



「つーか、佐藤はそういう気遣いができないからいつまでたっても結婚できないんだっつーの」



そう言いながら向日くんは笑った。

……へぇ。向日くんて笑うと八重歯が見えるんだ。

なんか可愛いな。


って何考えてるんだ、私はっ。




< 16 / 299 >

この作品をシェア

pagetop