あなただけを見つめてる。
「じゃあ、俺はそろそろ部活戻ろっかな」
向日くんはそう言って、スッとベンチから立ち上がった。
「これ、ほんとごちそうさま!超ウマかった!葉月のおかげでエネルギーチャージできたわ」
「……っ」
そう言ってニコッと微笑む向日くんに、私のドキドキが止まらない。
「じゃーな、葉月!」
「う、うん。部活、頑張ってね」
笑顔で手を振ってくれると、向日くんは小走りで行ってしまった。
「…………」
私は自分の飲みかけの綺麗なオレンジ色をしたオレンジサイダーを見つめる。
一度は閉じ込めようとした、向日くんを好きな気持ち。
だけど、彼女と別れた話を聞いて、蓋をしたはずのキャップが緩みだす。
勢いあまってその蓋をあけてしまったら。
とたんに、このオレンジサイダーみたいにしゅわしゅわと好きな気持ちがあふれだして。
きっともう、この気持ちを止めることなんてできない。
だから、これからも向日くんのこと、勝手に思っててもいいかな──?