あなただけを見つめてる。
「よかった」
向日くんは安堵の表情を浮かべた。
っていうか、私。まだ向日くんの腕の中なんですけどっ。
向日くんが近すぎて、ドキドキがハンパない。
このままじゃ心臓がどうにかなっちゃいそうだよ。
「あの、向日くん……?」
向日くんを見上げながら、遠慮がちにそう言いかけると。
「……やべぇ。今日の葉月、超可愛いだけど」
「……っ!?」
まるで独り言のようにボソッとそうつぶやく向日くん。
向日くんの顔が少し赤く見えるのは私の気のせいじゃないよね?
それに、向日くんから“可愛い”って言葉をもらえて、もう飛び跳ねたくなるほど嬉してたまらない。
「今日の葉月に、その向日葵柄の浴衣がよく似合ってるよ」
「……っ!」
似合ってる?
本当に?
この浴衣をお店で見つけたとき、向日くんの顔が浮かんできた。
でも、地味で日陰に咲く雑草のような私と、太陽の花と言われる向日葵とじゃあまりにも正反対で。
私はこの浴衣を着こなす自信がなかったんだ。
だから、お世辞でもそう言ってもらえて嬉しい。
思いきってこの浴衣を選んでよかったな──。