あなただけを見つめてる。


つーか、いきなり葉月のこと“葵”って呼び捨てしたけどマズかったかな?


けど、そいつが“葉月”って呼んでんの聞いてたら、葉月のことを同じ呼び方したくないって思ったんだよな。



「えっ?向日くん!?」



突然、背後から俺に呼ばれた葉月は、ものすごくびっくりした顔で俺のことを見ている。


それは、葉月の隣にいた男も同じだった。



「葉月の、知り合い……?」



その男は、隣にいる葉月に向かってそう聞いていた。


さっきは後ろ姿しか見えなかったけど、マジマジとそいつのことを見ると、男の俺から見ても男前だと認めざるを得ないくらい綺麗な顔をしている。


女からモテることなんか一目瞭然で。


……そういうことか。


こいつを見て、やっと理解できた。


葉月がイジメられていた理由も、葉月がなんでダテメガネをかけてたり、地味にしているのかも。


ずっと知りたかったことが、まさかこんな形で知ることになるとはな。



「そろそろ花火が始まるから急ごう」



きょとんとした顔して俺のことを見ている葉月の前まで歩いて行くと、その白く細い手をとって石段から立ち上がらせた。



「……じゃあ、葉月。また連絡するな」



葉月にそんなことを言うそいつを俺は睨みつけた。


絶対に、こいつに葉月は渡さない。



「行こう、葵」



葉月はそいつのことが気がかりなのか、何度も後ろを振り返る。


俺はそれが嫌で、葉月の手を引いて足早にその場所から離れた。








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