あなただけを見つめてる。
イライラが止まらなかった。
あいつのせいで葉月はイジメられてたっつーのに、助けることもできなかったとか男としてありえねーよ!
そのせいで、葉月はどんなにツライ思いしたのかとか、どんだけたくさんの涙を流したのかとか、そんなことを思うと余計にイラついてきてしかたない。
俺だったら、何があっても葉月を守ってみせんのに!
「……向日くん、なんか怒ってる?」
俺の顔色を伺うように、遠慮がちにそう聞いてきた葉月。
「俺、怒ってるように見える?」
「……うん」
態度に出さないように気をつけてたつもりなのに、隠しきれてなかったか。
「ごめん、怒ってるんじゃなくて、ヤキモチやいてた」
「え?……ヤキモチ?」
葉月はまんまるの目で俺を見ている。
「いきなり葉月のことを呼び捨てしたりしてごめんな」
「……ううん、」
「けど、これからは“葵”って呼んでもいいかな?」
「……べつに、いいけど。でも、突然どうしたの?」
「名前で呼び合った方が、距離が近くなるような気がしない?だから、俺のことも朝陽ってよんでよ」
「……えっ?」
「俺、もっと葉月のこと知りたいって思ってる」
「……っ!!」