あなただけを見つめてる。
元カレ


夏祭りの日から、一週間が経ち、8月に入った。


今年は猛暑で、とてもじゃないけど日中は外にでる気になれなくて、いつもクーラーの効いた部屋でセミの鳴き声を聞きながらゴロゴロ過ごすのが日課になっちゃってる。


今は自室でベッドに転がりながら、夏休み前に希子ちゃんから借りたマンガを読んでるとこ。


でも、ふとした瞬間に朝陽くんに夏祭りのときに言われた言葉が頭をよぎるんだ。



“葵はどうしたい?”



「…………」



それに、あの日を境に、朝陽くんからは下の名前で呼ばれるようになって。


私もいきなり“朝陽”なんて呼び捨てするにはかなり抵抗があるから、下の名前をくん付けで呼ぶことにした。


といっても、朝陽くんとは夏祭り以来会っていないから、ラインでのやり取りでしかそう呼んでないんだけどね。


でも、実際会って本人を前にしたら、ちゃんと呼べるかな?



「……朝陽……くん。きゃーっ!」



誰もいない部屋でそうつぶやいてみただけで、恥ずかしくて顔に熱が集まってくる。


ベッドの上で足をジタバタさせ、枕に顔をうずめていると。


ラインを知らせる着信がなった。


もしかしてっ!朝陽くんからっ!?

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