あなただけを見つめてる。


「あつ~い……」



待ち合わせより15分早く公園に着いたから、屋根がある日陰のベンチに座って待つことにしたんだけど、汗が止まらないよ。


普段ならこの時間は子供たちで賑わってる公園だけど、暑いせいか、今ここいは私以外誰もいないし。


しばらくセミの鳴き声を聞きながら、ぼーっとしていたんだけど、やっぱり思い出さずにはいられなかった。


この公園も、このベンチも、ほんと懐かしいなぁ。


中学のとき、鳴海と一緒に帰れる日はいつも決まってここに寄り道して帰っていたから。


この場所には、鳴海との思い出がたくさん詰まっているんだ。


鳴海に告白されたのも、それから、私から別れを告げたのもこの場所だったから……。


それがまさか、またここで鳴海と会う日がくるなんて思ってもみなかったよ。



「葉月!」



後ろから声をかけられ、振り向くと。


さわやかな笑顔を浮かべた鳴海がいた。



「お待たせ!」


「私も今来たとこ」



そう言って、私は立ち上がった。



「じゃあ、ここじゃ暑すぎるしさっそくどっかお店入るか」


「うん」



並んで歩きだした私たち。


あの頃とはやっぱり、鳴海を見上げる角度が違う。


それだけ、時間が流れた証拠なんだ。




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