あなただけを見つめてる。


「いらっしゃいませ~!」



近くのファミレスに入ることにした私たち。



「涼しいな」


「うん」



今までの蒸し暑さからやっと解放されて、おもわず私たちは顔を見合わせて笑顔になる。


店員に窓側の席に案内され、私と鳴海は向い合せに座った。


夏休みだからか、店内は家族連れや同い年くらいの高校生たちで賑わっていた。



「何食べようかな」



私も鳴海もそれぞれメニュー表を覗き込んでいると。


ふと、女子のヒソヒソ声が聞こえてきて顔をあげた。


すると、通路を挟んだ隣の席に座っていた女子高生3人組がこちらを見ている。



“ねぇ、見て!あの人、超イケメン!”


“マジだ!あたし、めっちゃタイプ!”


“でも、女連れとか最悪~”


“けど、女っつってもあれはただの友達じゃん?だって、女の方、超~地味じゃない?”


“だよね!あたしも同じこと思ってた!”


“声かけちゃえば?”


“えー!どうしよー!”



今の私は、鳴海と一緒にいても彼女には見られてないんだ。


なんだかそれも悲しいような……。


でも、これでよくわかったよ。



「葉月、メニュー決まった?」


「え?あ、ごめん。まだ……。鳴海は?」


「ゆっくり決めていいよ。俺はハンバーグセットにしよっかな」


「そっか、私はどうしようかな……」



私が地味でいてもいなくても、モテる男子の隣にいればいつだって、嫉妬の対象にされてしまうんだ……。

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