あなただけを見つめてる。


駐輪場から校舎の正面玄関へと向かうと、クラス分け表が貼り出されたボードの前にはたくさんの生徒たちで賑わっていた。


“キャー!また同じクラスだね!”

“うわっ!最悪っ!うちのクラス全然知らない人ばっかじゃん!”


そんな会話があちこちから聞こえてくる。

その中をなんとか押し分け、私は自分のクラスだけを確認すると教室に向かった。


……2年3組か。


私には特別同じクラスになりたい友達がいるわけじゃない。

だけど、この一年間を平和に過ごせるかどうかは新しいクラスのメンツにかかっているわけだから、どうかヘンな人と同じクラスじゃありませんように……。

そう願い、ドキドキしながら教室に入ると、まだそこには数人しか集まっていなかった。

その中に見覚えのある顔を見つけた瞬間、ホッとする。



「おはよう、希子ちゃん。望ちゃん」



私はさっそく二人の元へと向かい、声をかけた。

大森希子(おおもりきこ)ちゃんと、小橋望(こはしのぞみ)ちゃんは、私と同じ美術部なんだ。




「あ!葵ちゃんも同じクラスなんだ?よろしくね」



私に気付いた希子ちゃんがニコッと笑ってくれる。

その横にいた望ちゃんも“よろしくね”と微笑んでくれた。


希子ちゃんは、黒髪のショートカットで背が高くて。

望ちゃんは、肩まである黒髪を後ろで一つに縛っていて、背がちっちゃい。

二人とも美術部に所属しているだけあって絵がとても上手くて、勉強もできるし、真面目でおとなしいタイプ。

希子ちゃんと望ちゃんにはヘンに気を使ったりしないし、一緒にいてラクだから、二人と同じクラスになれてよかったかも。


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