あなただけを見つめてる。



それから、私たちはしばらく黙ったまま、ただひたすら足早に歩き続けていた。



「……鳴海?」


「ごめん、俺どうしても小野寺のこと許せなくてさ」


「…………」


「葉月と小野寺あんな仲よかったじゃん。それなのに、簡単に葉月のこと裏切った小野寺のこと理解できねぇよ……」



月明かりに照らされた鳴海は、眉間にシワを深く刻み込んでいた。


エリちゃんとの一件があってからの私は、友達関係に一線を引くようになった。


誰も信じられなくて。


信じても裏切られるんじゃないかって不安で。


裏切られることが怖くて、これ以上傷つきたくなくて。


自分を守るためにひとりでいることを選んだ。


だけど、孤高の一匹狼になる覚悟もなくて。


高校に入ってからは、学校内だけで連む上辺だけの友達を見つけた。


本音は語らず、偽りの笑顔を作り、波風立てぬよう、常に相手の顔色ばかり伺って、言いたいことも言えずにいた。


だって、もう誰も敵にまわしたくなかった。


ただただ平和な日常さえ送れたらそれでよかったの。


だけど、朝陽くんや風香に出会って、本当にそれでいいのかと自分自身に問うようになった。


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