あなただけを見つめてる。


湿気を帯びた夜風がまとわりつく帰り道。


もう遅いからって、朝陽くんは私を。土屋くんは風香を家まで送り届けてくれることになった。



「葵、それじゃあまたね」


「じゃあね、葉月ちゃん。朝陽、しっかり送り届けてやれよ」


「ばーか。それはこっちのセリフだっつーの」



別れ道で風香と土屋くんとバイバイして、私と朝陽くんは静かな住宅街を並んで歩いていた。



「朝陽くん、今日は本当にいろいろとありがとう」


「俺が葵の誕生日一緒に祝いたかっただけだからそんな礼なんていいよ」



朝陽くんはどこか照れくさそうに地面を見ながらそう言った。



「朝陽くんは、ほんとすごいよね」


「すごいって何が?」



私の言葉に、朝陽くんはこちらを向いた。


朝陽くんて目力があるから、目が合っただけでドキッとしちゃうよ。


< 222 / 299 >

この作品をシェア

pagetop