あなただけを見つめてる。
「弟の昇(のぼる)は、俺の1コ下で、当時まだ小3だった。あの日、俺と昇は学校帰りに近所の公園で遊んでたんだけど、遊びに夢中になりすぎて、気付いたときには辺りはもう真っ暗になってた。早く帰らなきゃなって思いながらも、俺たちはくだらない話をしながらガードレールもない細い道を二人並んで歩いてたんだ」
「…………」
私は生唾をゴクン、と飲み込んだ。
「その時。突然、前から走ってくるトラックが、俺たちが歩いてる歩道に迫ってきて。……危ないっ!!そう思ったときには、車道側を歩いてた昇が……昇が、トラックに……」
「……っ!!」
朝陽くんはそこまで言うとキュッと強く下唇をかみ、今にも泣きそうな表情をしていた。
こんなに辛そうな朝陽くん、初めて見るよ……。
私の心臓はバクバクと激しく音を立てて。
今聞いた話が信じられないという気持ちと恐怖で身体がカタカタと震えてとまらない。
頭の中は真っ白で、朝陽くんにかける言葉も見つからなかった。