あなただけを見つめてる。
「じゃあ、切っていきますね~」
美容師さんは、背中まである私の黒髪にハサミを入れた。
バサバサと床には長い黒髪が散らばっていく。
「もしかして、失恋かな?」
「え?」
突然の質問に目を丸くした。
「よく、失恋を理由に髪をバッサリ切りにくる女の子が多いから」
……あぁ、そういうことかぁ。
でも、私の場合は。
「……自分を変えたいなって思って。それで、まずは見た目からってことで」
そう言って、私ははにかんだ。
「そうだったんだー!ごめんね、失恋?なんていきなり失礼なこと聞いちゃって。そういうことなら、私に任せて♪葵ちゃんの可愛さを最大限に引き出してみせるから!」
「はい、お願いします」
よかった。美容師のお姉さんがいい人そうで。