あなただけを見つめてる。
「朝陽……」
しばらくすると、玄関のドアが開いて、中から桜子が出てきた。
「……久しぶりだな」
2か月ぶりくらいに会った桜子は、元気がなく、やつれているようにも見えた。
きっと、いや、間違いなくそうさせたのは俺が原因なんだと思うと、直視することができなかった。
「朝陽っ……」
だけど、桜子は俺の顔を見るなり俺に向かって抱き着いてきた。
そして、俺の身体をギュッと強くつかみながら、桜子は俺の胸に顔をうずめながらこういった。
「朝陽にずっと会いたかったよぉ……」
「…………」
「お願い……あたしを捨てないでっ。あたしには朝陽しかいないの。朝陽じゃなきゃダメなんだよぉ……」
そう言いながら、桜子は泣いていた。
罪悪感で胸が締め付けられる。
けど、俺は心を鬼にして、桜子の身体を両手で引き離した。
そして、泣いて真っ赤になっている桜子の目をしっかりと見つめた。
「悪いけど、桜子の気持ちに応えることはできない」