あなただけを見つめてる。


「葵っ!」


……ビクッ!!


学校の駐輪場で自転車をとめているとき、不意に背後から名前を呼ばれて反射的に肩を震わせた。


「ふ、風香っ」


「あれ?ビックリさせちゃった?ごめんね」


「ううん、おはよ、風香」


「おはよ~」



風香も空いている場所に自転車をとめて、ふたりで教室に向かう。


風香が一緒にいてくれるだけで安心感があって、いくらか緊張もほぐれる。


教室に行くまで、やたら周りからの視線を感じて、私はまっすぐに顔を上げて歩くことができなかった。


そして、ついに教室のドアの前まで来たとき、緊張はすでにピークに達していた。
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