あなただけを見つめてる。


「葵、おまたせ~!」



根本さんたちが教室から出ていって間もなくして、風香がトイレから戻ってきた。



「おかえり」



私は、何事もなかったかのように笑顔を作った。



「どうしたの?なんかあった?」


「え?」


「葵、元気ないからさ」



そう言って心配そうに私の顔を覗き込む風香。



「そんなことないよ?それより、風香。朝陽くんが、このあと4人でカラオケ行こうって。風香も行くよね?」


「カラオケか~。あたし、あんまり得意じゃないけど、たまにはいいかも」


「よかった♪じゃあ、二人が下駄箱で待ってるから急ごう~♪」



無理に明るく振舞うのは、風香を心配させたくないのと、根本さんたちのことを頭から切り離したかったから。


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