あなただけを見つめてる。


いや、こんなことすんのはアイツらくらいしか思い浮かばない。


けど、こんな嫌がらせのために作られたもの、誰が信じんだよ。


きっと、この写真だって何か理由があるはず。


けど、葵がアイツと会ってたことや、手をつないでたことは事実で。


俺はそのことに余裕をなくして、葵をまっすぐに見ることができなかった。


とにかく一度ひとりになって頭を整理したい。


そう思った俺は、屋上に向かった。


肌に感じる風も、空も、匂いも、もうすっかり秋で。


あんなに暑かった夏が急に恋しくなった。


今年の夏は、楽しい思い出しかないな。


葵と行った夏祭りも。


葵のバースデーパーティーでしたバーベキューも。


みんなでした手持ち花火も。


もうずっと前のことみたいに懐かしく感じる。


俺はフェンスにもたれながら、いろんなことを考えていると。



「向日っ!」



そこへ突然、緑川が現れた。

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