あなただけを見つめてる。


そして、ついに学園祭当日の朝を迎えた。


どこからかする金木犀のいい香り。


青く澄んだ秋晴れの空。


少しひんやりとした爽やかな空気。


校庭にはずらりと模擬店が並び、校内も、喫茶店やお化け屋敷、ゲームコーナーがあったり、学校全体が開始前準備で賑わっていた。


私たちが出店するチョコバナナ屋さんも朝から大忙し。


今は、みんなでエプロンと三角巾とマスク着用して調理室で作業中なの。



「ちょっと、土屋!あんた、さっきからつまみ食いしすぎっ!」


「これはつまみ食いじゃなく毒見だから」


「はっ!?何言ってんの?」


「お客さんにもしものことがあったら大変じゃん?」


「ばっかじゃない!あんたは口じゃなく手を動かしなさいよ!手を!」



土屋くんと風香はふたり揃うと相変わらずこんな調子だ。



「ほら、風香も一口食ってみ?」



土屋くんはそう言うと、風香の口の中にスプーンですくったチョコバナナを入れた。



「え?ちょっ……ん!……美味しい!」


「だろっ?」


「って、そうじゃなくてっ!」



ふふっ。ほんと、この二人お似合いすぎるよ。


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