あなただけを見つめてる。



それから、30分後。


風香に着替えを手伝ってもらい、メイクもヘアメイクも完成した私は、全身鏡の前に立っていた。


お題が“デート服”と聞いたときからこれを着ようと決めていた、ヤマブキ色の帯に、淡い水色地に黄色と淡いピンク色の向日葵が咲く浴衣。


髪には、あらかじめ用意してきた向日葵の生花をさした。


ピンク色のチークだけは少し濃いめに、あとは全体的にナチュラルに仕上げたメイク。



「葵、ひまわりみたいっ!!」



風香のその言葉は、私にとって何よりもの最高のほめ言葉だった。


初めてこの浴衣に袖を通したときは着こなす自信がなかったけど、だからこそ、今日どうしてもこれを着て出場したかったんだ。


ここまで来たら、やっぱりどうしても朝陽くんと一緒にグランプリをとりたい。


そして、もし、グランプリをとることができたら。


その時は、私……。


朝陽くんに自分の気持ちを伝えたい──。

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