あなただけを見つめてる。
舞台裏に着くと、すでに檀上に上がる人のほとんどが揃っていた。
「葵!」
そして、その中に朝陽くんの姿を見つけた瞬間、胸がキュンと高鳴った。
「なんか、制服から浴衣に着替えるだけでやっぱ急に雰囲気変わるね。葵が大人っぽく見えるっていうか、……すっげー色っぽいんだけど」
「……っ!えっ?」
そう言うと、朝陽くんは口元を手の甲で隠し、目をそらしている。
もしかして朝陽くん、照れてる?
っていうか、まさか朝陽くんにそんなことを言ってもらえるなんて思ってもみなくて、私は勝手にドキドキして顔が熱くなった。
「朝陽くんこそ、それ……」
「……今まで甚平しか着たことなかったけど、どうかな?」
「カッコイイ……」
スラッとしていて長身だからほんとに紺の浴衣がよく似合っていて。
私は朝陽くんに見とれていると。
「それでは、開始時間となりましたので、みなさんスタンバイよろしくお願いします」
いよいよ、ほんとに始まるんだ……。
緊張で心臓が口から飛び出しちゃいそう。
「葵、どうせなら、この場にいる誰よりも思いっきり楽しんでやろうぜ」
……朝陽くん。
「うん、そうだね!楽しもう」
私はこの人の笑顔に。この人の言葉に。今までどれだけ励まされたことだろう。