あなただけを見つめてる。
教室の後ろの隅っこで、希子ちゃんと望ちゃんと昨日のドラマの話をしていると。
廊下の方からは男子が集団で騒いでいる声が聞こえてくる。
うるさいな……。何事?
思わず怪訝な顔で廊下を見つめていると、その騒がしい声はどんどん大きくなっていって。
……もしかして。
そう思ったときには、男子5人が一斉に私たちのいる教室の中へと入ってきた。
そして、たった今までざわついていたはずの教室は一瞬にして静まり返り、クラスメートたちの視線は彼ら一点に集中していた。
私も茫然とその様子をうかがっていると。
「俺、サッカー部の向日朝陽(むかいあさひ)!3組のみんな、これから一年間よろしくねー!」
集団の中でも一番目立っている人物が、上機嫌な顔でみんなに向かって自己紹介した。
ずいぶんと派手な登場の仕方だな……。
それから、向日くんに続いて、すぐ後ろにいた男子たち4人も
“よろしく~!”
“楽しいクラスにしてこーぜー!”
とか言って、またハイテンションで騒ぎまくっている。
「…………」
よりによって、私が最も苦手とする、目立つタイプの集団と同じクラスになるなんて……。
──最悪。
その一言につきる。