あなただけを見つめてる。




「そうか?」



そう言って笑うと、向日くんはピンセットで丸まった綿をつまむと、それに消毒液をつけた。



「葉月。ここに足乗せて」



私は言われるがまま、丸椅子の近くにあった足置き台に左足を乗せた。


向日くんは、こんなん風に怪我して困ってる人がいたらすぐに手を差し伸べてくれたり。


クラスで孤立している人がいれば、率先して声をかけてあげたり。


いつも、誰にでも分け隔てなく接してくれてるような人──。


だから、怪我したのが私じゃなくて他の誰かだったとしても。


向日くんはその人にも同じことをしたはずで。




「ちょっとしみるかもしんないけど、我慢してな」




私が、“特別”だからじゃない。




「……っ!」




私は眉間にシワを寄せ、顔をゆがませる。



「ごめん!しみるよな」


「っ……」




なんで?


なんで怪我した傷口より、胸のほうが痛むの……?



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