あなただけを見つめてる。


「はいっ、これで全部の傷口消毒完了っと!」


「……ありがとう」


「どういたしましてっ。けっこうしみたでしょ?大丈夫だった?」


「うん、大丈夫」


「我慢強いんだな、葉月は。一言も痛いって言わなかったもんな。えらいえらい!」



そう言いながら、向日くんはまるで小さい子供にするみたいに、私の頭をポンポンって優しくなでた。



「……っ」



思わず恥ずかしくて顔が熱くなっちゃう私。


うつむくと、今、向日くんに手当てしてもらった膝が視界に入る。



「……ごめんね。私のせいでクラスのみんなに迷惑かけちゃった……」



次の人にバトンを渡すことができないまま保健室にきちゃったけど、あのあとうちのクラスはどうなったんだろう……。



「気にすんなって。リレー中に転ぶなんてことは葉月に限らずよくあることなんだしさ」


「……でも。今日は練習だったけど、もし本番でもまた転んだりしたら、私……、」



そんなことを考えると不安になって、膝の上で両手の拳をギュッと握りしめた。


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