あなただけを見つめてる。
「心配すんな。本番では俺が葉月の次に走るから」
「……え?でも、向日くんはアンカーなんじゃないの?」
「うちのクラスは他のクラスよりひとり人数少ないから、俺だけ2回走ることになってるんだよ」
「そうなの?」
「うん。だから、葉月は余計なこと気にしないでいいから楽しんで走れよ。な?」
またポンポンって私の頭をなでながら、ニッって笑ってくれる向日くん。
「……うん。ありがとう」
向日くんていう人は、たとえば雨雲が覆う灰色の空でも、一瞬にして青空に変えてしまう力を持っているような人で。
いつだって、ネガティブをポジティブに変換してくれるね──。