あなただけを見つめてる。



「葵ちゃーん、怪我は大丈夫だった!?」



私が教室に戻ると、心配そうな表情をした希子ちゃんと望ちゃんがすぐにかけよってきてくれた。


男子は別室で着替えてるから、今この教室にいるのは女子だけだ。



「うん、大丈夫だよ。ごめんね、私、ほんとドジだから」



そう言って、アハハと笑い飛ばす私。



「ほんとに大丈夫?でも、転んだ葵ちゃんをお姫様抱っこして連れ去る向日くんが少女マンガに出てくる王子様みたいでちょっとかっこよかったな~」


「えっ!?」



そう言って、うっとりした表情の希子ちゃん。


希子ちゃんは少女マンガが好きで、まだ読ませてもらったことはないけど自作のマンガも描いているみたいなんだ。



「さっきのシーン、私のマンガに使わせてもらっちゃおうかな」



なんて、希子ちゃんはなにやらさっそく妄想を膨らませている様子。


私だって、お姫様抱っこなんてマンガや小説の中だけでしかありえないって思ってたよ。


なのに、まさか自分が向日くんにされるなんてっ……。


思い出しただけで恥ずかしくなってくるよ。


そういえば、あの時、向日くんすごくいい匂いしたな……。


なんの香水使ってるんだろう?



「……っ!」



って、私ってば何考えてるんだろ!


なんか急に熱くなってきちゃったよっ。









< 40 / 299 >

この作品をシェア

pagetop