あなただけを見つめてる。
そっか……。やっぱりそういうことだったんだ。
根本さんは、私の傷を心配してくれてるわけじゃなくて、私が向日くんにお姫様抱っこしてもらったことをよく思ってないんだよね?
やっと根本さんが私に声をかけてきた真意がつかめて、私は心の中で盛大な溜め息をついた。
「私も保健室までひとりで行けるって言ったんだけど……、」
「さぞかし気分よかったことでしょうね」
ふっ、と片方の口角を持ち上げて、皮肉たっぷりなセリフを吐く根本さん。
私は何も言い返す言葉が見つからなかった。
やっぱり、あの時私が全力でお姫様抱っこを阻止しておけばよかったんだ。
そしたら、根本さんからもこんなこと言われずにすんだのに……。
「またお姫様抱っこしてもらいたいからって、本番では転んだりしないでよね?」
「……っ」
そんなことするはずないじゃん!
そうハッキリと言い返せない自分が悔しくて、ギュッと下唇を強く噛んだ。
でも、その時。
「ちょっと待って」
……っ!?