あなただけを見つめてる。
私の前から立ち去ろうとする根本さんたちを呼び止めたのは、私の前の席にいた緑川さんだった。
緑川さんから声をかけられた根本さんたちは、少し驚いた顔をしている。
無理もない。こんなふうに緑川さんから誰かに声をかけるところなんて見たことないもん。
「何?」
少し戸惑いながらも、怪訝そうに緑川さんを見る根本さん。
「わざわざ嫌味を言いたくなるくらい、葉月さんのことがそんなにうらやましかった?」
……っ!
ちょっ!緑川さん!?
まさか、緑川さんがそんなことを言うとは思ってもみなくて、私はただ驚くばかりだった。
「はっ!?別にあたしたちは、」
「同じことして欲しさにわざと転ぼうと思ってるのは、あんたたちの方なんじゃないの?」
……っ!!
緑川さんの言葉に、根本さんは面食らった顔をしている。
「なんなの、バカバカしいっ!いこっ!」
それから、怒った顔をして、根本さんは取り巻きを引き連れて教室から出て行ってしまった。