あなただけを見つめてる。
今の一件で、すっかり静まり返ってしまった教室。
緑川さんは何事もなかったかのように自分の席に座ると、次の授業の準備を始めだした。
「…………」
まだ今起きたことすべてに驚きすぎて、頭の中が混乱してるけど。
緑川さんは、私のことをかばってくれたんだよね……?
「あの、緑川さん……」
声をかけると、緑川さんは後ろを振り返って私を見つめた。
「さっきはありがとう」
ペコッと頭を下げる私に、緑川さんは一言。
「べつに」
そう言うと、また前を向いてしまった。
だけど、私は緑川さんの背中に向かって言葉を続ける。
「緑川さんが私のために言い返してくれて、ほんとにうれしかった」
私は根本さんたちが怖くて、言い返したくても何も言えなかったから。
そんな弱い自分が情けないよ……。